case.10  浅いハリ ―― 深いハリ

「浅すぎて何にも感じないようなハリにカネなんて払いたくないし」自分が患者としてハリを受けていた頃のお話です。今回はかなり個人的なお話になると思います。「深すぎて痛い拷問みたいなハリなんかわざわざ受けたくないし」  今思う […]

case.9  逆子

 そう頻繁にあることではありませんが、ヒトの人生に一度か二度あるかないといったケースには必ず鍼灸院をたずねてくることがあります。 「ちゃちゃっと据えてほしいんですが」鍼灸院というより、このケースにおいては灸院で構わないよ […]

case.8  メイゲン

「いったいどうなってるんだいッ! どうなってるんだいッ! どうなってるんだッ! どうなってるんだッて! どうなってるんだよッ!」とさらに強まっていこうとする口調を耳にして、わたしは最初電話のかけ間違いではないかと思いまし […]

case.7  文体

 という一字一字の字面のインパクトが強すぎて、内容の方が全然頭に入ってこない…… 「……えーと」とりあえずわざとこのような字を書いているのか否かを確認しておくことにします。「……わざとではないですよね?」 「わざと?」 […]

case.6  肝は青い?

 何を根拠にしているのかわからない所もあるのですが、東洋医学の世界では患者さんの体の色と臓器をセットにしてとらえる習慣があります。根拠をたずねようにも、もう何千年も前からのことのようですし、残っているのはこちらに有無も言 […]

case.5  点・灸

 もう四、五年前になるでしょうか。慢性的な腰痛をかかえて来院されていた方の中に大学の四年生になる女性がいて、きっと就職活動などのストレスも症状を悪化させているように見越して、 〝 べつに急いで将来をきめることなんてないさ […]

case.4  刺さないハリ

「いッツ」 「んおー」 「アウチ」 「おうッ」 「どひゃ」 「イエィス」  ハリを受けて思わず漏れでてしまう声には、100人いれば100通りあると言っても過言ではありません。これは声の個人差以前の感度の個人差でもあります […]

case.3  幻肢

 治療前に5分ほどの時間を設けて予診表を書いていただくのが、初代からのこの治療院のきまりとなっています。すでに常客となっている患者さんには問診ですませてしまうこともあるのですが、初診の患者さんには必ず書いていただいていま […]