case.6  肝は青い?

 何を根拠にしているのかわからない所もあるのですが、東洋医学の世界では患者さんの体の色と臓器をセットにしてとらえる習慣があります。根拠をたずねようにも、もう何千年も前からのことのようですし、残っているのはこちらに有無も言わせない文献のみです。大体こんな感じの文言です。

以五色命蔵 、 青為肝 、 赤為心 、 白為肺 、 黄為脾 、 黒為腎 。

( 『黄帝内経 霊枢』 五色篇 第四十九 )

 なぜ心に異常があると赤くなるのか? なぜ脾に異常があると黄色くなるのか? なぜ肺に異常があると白くなるのか? なぜ腎に異常があると黒くなるのか? といった疑問の答えは、日々いろいろな患者さんのお体を診ていると、何となくわかってきます。

「……ずいぶん赤いですね」

 きっと心臓に負荷がかかっていて血圧も高いから、色も赤くなっているんだろうな……

「……ちょっと白いですね」

 きっと呼吸も浅くて熱をため込むこともできていないから、白くなっているんだろうな……

「……ちょっと黄色いですね」

 きっと消化がうまくいっていないから食欲も落ちて、肌の色も黄色や土色みたくツヤを失っているんだろうな……

「……若干黒ずんでますかね」

 きっとうまく排泄することができなくて、腎の機能も落ちて、黒っぽくなってきているんだろうな……

「……では治療に入りますね」

 といった具合に、そのまま色を一つの診断基準として治療に入っていくことも少なくありません。

※ 続きは『本を気持ちよく読めるからだになるための本――ハリとお灸の「東洋医学」ショートショート』(晶文社)でお楽しみください。